学識が必要

2011-03-03

紫式部は『源氏物語』「少女」の巻の中で、光源氏の息子に対する教育論を展開している。これがつくづく、「昔も今も変らないなあ」と思わせる話なんだ。光源氏は、元服(成人式)を迎えた息子の夕霧に、位の高い四位ではなく、あえて六位の低い位階から出発させ、学問修得のために大学寮に入学させた。夕霧の祖母の大宮が「かわいい孫になぜ、わざわざ苦労をさせるのか?かわいそうではないか」と言うと、光源氏はこう答えた。「高貴な家の子として生まれ、官位が思いのままになり、世の中の栄華になれておごってしまうと、苦労して勉強することなどバカらしくなってしまうでしょう。遊んでいても、ラクに出世できるのでしたら、誰も勉強なんてしなくなります。今は高貴な家柄に守られているから、まわりも夕霧をチヤホヤしてくれますけれど、時代が移って、もし父親であるわたしが死んだら、夕霧はきっと人から軽蔑されて、バカにされて、何の取り柄もないミジメな人間になってしまうでしょう」親が偉いからって子どもを甘やかすとロクな者にはならないってことだな。「なほ、才をもととしてこそ、大和魂の世に用いらるる方も強うはべらめ」つまり、「やはり学問を基礎としてこそ、はじめて政治的・実務的才能が世間に認められるということも確実というものでございましょう」と言っているんだ。「大和魂」っていうのは、漢学で得た知識を、日本の実情に合わせて応用していく知恵と才覚――政治的・実務的才能のことをいう。大和魂を身につけてはじめて、名実共に立派な貴族として人々に敬われる。それもこれも学問、学識があってこそ、と言っているんだ。学者一家に生まれた紫式部だけのことはある。結局、才=つまり学識がなければ、何も始まらない。千年前も今も同じだろ?家がどんなに裕福で、親がどんなに偉くても、それはおまえの価値じゃない。世の中に出て、どんな道に進むにしても、一人前になって成功するには、まずは学識が必要なんだ。才を身につけろ。才をもとに社会で役に立つ知恵と才覚を身につけろ。甘やかすな。甘やかされるな。

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