「さすが、パリ」といえるのはシャネルのオートクチュール

2010-12-20

パリをたつ頃には、この仕事を「面白そうだ、やっていこう」と考えるようになっていた。シャネルで服をつくってみて、分業の素晴らしさに感心した。伝統的に整理されている。日本でデザイナー自身がデザインをし、お客さんの相手も、仮縫いもする。布地の仕入れや、縫い方も細々と指導しなくてはいけない。歴史がないからノウハウもない。何でも自分で考え、やってみる。だから、くたびれ果ててしまうわけだ。ここではデザイナーがアトリエの人たちと力を合わせて、いいコレクションを創る、それを柱にして、スタッフがお客さんたちに対応していけるという、それぞれの専門職によるプロフェッショナルなシステムができあがっている。そんなシステムづくりや、スタッフを養成していけば、私にももっと幅広い楽しい仕事ができるのではないかと思えてきたのである。もう一つ、女のデザイナーの可能性を思った。表を飾り立てるのではなく、内側からにじみ出るような、女の気持ちが形になっているような服。着心地が悪くても、男が「いいね」というものを着ていた人が多かった時代に、シャネルは明るい可能性と勇気を与えてくれたのである。こうして、初めての贅沢な休暇で心身の疲れも回復し、まるで霧が晴れたような爽やかな気持ちになった。“おのぼりさん”は他にもいろいろ買いものをしたけれど、「さすが、パリ」といえるのはシャネルのオートクチュールだった。