「学生時代にあんなに熱心に覚えた詩も、いまはまったく思い出せませんからね。それも自国語の詩だというのに……まして外国語だったら、なおさら思い出せないでしょう」なぜか。それが頭を使って無理に覚えたことだからだ。記憶のための記憶であるからだ。「だけど、それが自分の書いた詩だったらどうだろう?間違いなく大部分を思い出せるだろう。それが自分の内部から生み出され、また、何度も何度もくり返し読み直して体に刻み込んだ言葉だからだ。外国語を習得するのも、それと同じ原理さ。いわば『体になじむ』まで、それを習慣化するんだ」「体になじませるつまり、ダンスの滑らかな動作や絵を描くときの手慣れた筆運びのようなものですね」「そう。まさにそれだよ。完全に身につき、考えるより先に手や足がひとりでに動いてしまう。」ということである。